新教育長の任命と教育委員会の制度改革について

6月議会 ≪一般質問≫より

「新教育長の任命と教育委員会の制度改革について」

▼強まる教育への首長の影響力!

「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正に基づき平成27年から「教育委員会の制度改革」がスタートしています。

日本の教育委員会制度は、戦前の軍国主義教育への反省から、教育の政治的独立に重点を置き、一貫して自治体行政からは独立した執行機関として位置付けられてきました。

教育の専門家ではない一般の市民から教育委員を選出し、住民の意向を教育行政に反映する、いわゆる「レイマンコントロール」の考え方が1948年の発足以来続いています。

安倍内閣が「大津市のいじめ問題」を理由として教育行政の責任体制の明確化や、教育委員会の審議の形骸化の是正を中央教育審議会に諮問したことの答申に対して、日弁連などからは「運用次第では首長の教育への影響力が大きくなりすぎる」として意見書が提出されていました。

しかし、安倍内閣の進める教育委員会制度改革は「首長が招集する総合教育会議」「首長が定める教育大綱」「首長による教育長の任命」の3本柱で進められています。

 

▼「大綱」に「教科書の採択」を特筆したのは稲城市だけ

高橋市長はこの改革に熱心で二期目の改選後すぐに「ふれあいを通じて人と文化を育む稲城の教育大綱」を策定しました。

これには「教科書の採択」が入っていますが、都内23区、26市中「教科書の採択」を大綱に特筆しているのは稲城市のみです。

高橋市長は「教育再生首長会議」に参加し、現在は「幹事」も務めています。

新設の南山小学校への「二宮金次郎像」の設置や、その記念講演から「報徳」の思想を推奨する「市長コラム」の内容にはこの会の影響が強いのではと大変危惧しています。

 

▼教育委員会制度改革について市長に問いました!

今回の制度改革においても教育委員会が独立した執行機関であることは存続しています。

また、教科書の採択については、教育委員会の専権事項としてこれまで通り行うということが、議会においても確認されています。

改めて、教育委員会の制度改革について市長に問いました。

 

【回答まとめ】

制度改正後も教育委員会が所管する事務については、自らの権限と責任において管理・執行する。

◯「総合教育会議」は予算の編成・執行権限を持つ市長が教育委員会と協議・調整を行う意見交換の場と考えている。

◯教科書採択についてはこれまでと変わりない。

◯レイマンコントロールの考え方は変わらない。教育委員の構成は法律に基づき、年齢、性別、職業に偏りが生じないよう努めている。また、一度に複数の委員が交代しない体制としている。

◯新教育長の任命については、市長が提案し、議会の同意を得て決定するため副市長と同様の手続きとなる。

 

▼新教育長の任命とこれからの教育委員会の運営に注目していきましょう!

 

市長から「教科書採択やレイマンコントロールの考え方は変わらない」という回答が得られたことは良かったと思います。

また、「総合教育会議」ではすでに2件のいじめ案件について審議されるなど、対応がスピードアップしていることもまた事実です。

まさに、運用次第といえる今回の「教育委員会制度改革」、市民が注目し様々な意見を伝えていくこと、また任命された教育委員が真のレイマンコントロールを果たして行くことが重要です。

※8月21日の教育委員会では平成31年度使用 中学校「特別の教科 道徳」の教科書の採択について審議される予定です。可能な方は傍聴しましょう!

(午前10時から市役所で開催)

 

「教育再生首長会議」とは?

この会は2014年に発足、「教育再生」について安倍総理に毎年「提言」などを行っている首長が集まる団体ですが、事務局は「日本教育再生機構」が委託を受けています。

「日本教育再生機構」とは「新しい歴史教科書をつくる会」から分かれて「育鵬社」の教科書の採択を進める団体です。

この特定の教科書の採択を求める団体が事務局を担い、内部の講演会には櫻井よしこ氏や元防衛大臣の稲田朋美氏が名を連ねます。

櫻井よしこ氏は中央教育審議会委員として「教育委員会廃止論」を強く展開してきました。「教育再生首長会議」がとても政治色の強い団体であることが見て取れます。