マイナンバー制度 誰のため?(稲城ネットレポートNO.102より)
■やっぱり起きた!と言わざるをえません。
3兆円と言われるマイナンバー市場を巡る汚職。厚生労働省の役人が、企業から「顧問料」などの名目で300万円以上を受け取っていたとの報道がありました。IT関連企業では中堅というこの会社は平成23年度から少なくとも5件、12億円以上を厚労省から受注しているということ。背景には「過去のシステムを運用してきた既存の大手業者が有利で、中小企業が中央省庁の大規模案件に参入するのは厳しい」という状況があるということです。
一方でマイナンバーの流出、詐欺といった事件も発生しています。誤ってマイナンバーを記載した住民票を発行するといったミスが相次いでいる他、「マイナンバーのセキュリティ対策」を持ち掛ける「マイナンバー詐欺」も多発、一体誰のためのマイナンバー制度かと問わざるを得ません。国民が望んでいるのは「消えた年金への対策」であり「災害時給付金などの迅速な給付」です。
海外ではセキュリティの問題から利用を制限しようという動きの多い中、他国でも例を見ない民間も巻き込んでの大規模な運用の拡大を望んでいるのは、明らかに国とこれにより利益を上げる大企業ではないでしょうか。利便性ばかりが謳われていますが、その運用やセキュリティの問題について注視していかなくてはなりません。
9月議会では「稲城市特定個人情報の保護に関する特例を定める条例」が上程されました。
稲城・生活者ネットワークは、マイナンバー制度の実施に伴い最低限必要な措置としてこの条例に賛成しましたが、マイナンバー制度そのものに対して全面的に賛成しているものではないという立場から討論をしました。
〈討論の論旨〉
●当初の社会保障、税、災害給付の三本柱以外にも様々な情報を一元管理し世界的にも類を見ない大規模で危険をはらむ計画を前のめりで進めている。
●預金高まで一元管理される「正確な所得捕捉」によって「公平な税の負担」と「適正な社会保障の配分」を実現すると言うが、「負担」に応じた「保障」の制限とならないのか。
●健康情報や雇用情報の一元化により民間市場への「消費誘導」「雇用誘導」とならないのか。
●費用対効果、自治体の負担も注視していくべき。
●大企業中心の進め方が「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に合致するのか。
●住民票を持たない人やDV被害者など、このカードを受け取ることが出来ない人は最も保護を必要としている人。「自治体は市民の命と財産を守る最前線」ということを肝に命じ、制度のメリット・デメリットを解りやすく示して丁寧な対応を。そして、自治体から国への監視と提言を積極的に行うべき。