学校はだれの居場所? 前川喜平さんの講演とパネルディスカッション

1月12月、調布のたづくりで開催された、前川喜平さんの講演を聞きました。

昨年、寺脇研さんとの対談も聞きましたが、今回はテーマに沿ってかなり沢山のことが詰まっていたという感想です。

教育に関わる官僚として38年間働いてきて、今、前川さんの中に残っているもの、大事な部分についてお話下さったと思います。

▼まず、憲法に保障される「義務教育」の意味について。

「子どもに教育を受なければならない義務があるのではない、保護者が教育を受けさせる義務がある」ということ、
あくまでも「こどもは権利者である」ことを最初に話されました。

戦前の「臣民の三大義務(兵役、納税、教育勅語により定められた教育)」と混同してはならないということ。
そもそも、憲法に国民の義務を書く必要はなく、憲法は「国民がつくり国が守るもの」という「憲法」の意味についても言及されていました。

日本の學校が西洋の「兵式學校」をお手本に作られた学校であり、「全体止まれ!」などの号令や、兵隊の背嚢を模したランドセル、
セーラー服や詰襟の制服もそのなごりなのだと。
1941年の国民学校令によって、教育勅語をもとに「皇国の臣民」を育てようとした名残が各所に残っているが、
それに馴染めない子どもが居てもおかしくはないのだというお話は印象的でした。

そして、ご自身が田舎から東京に引っ越してきたときに、学校に行くのが嫌で不登校気味になったが、それはむしろ自然なことだったと思うとも話され、
不登校は問題行動ではないと文科省も今は認識している筈とのこと。つまり、学ぶ場所はどこであってもいいということ。

▼そして、もう一つの重要な論旨は「すべての人が、その個性に合わせて無償の普通教育を受ける権利」について。

日本国憲法26条には義務教育について次のように記されています。
第二十六条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

この「すべての国民」を「すべての人」に置き換えて在留外国人も含めたものに、「能力に応じて」は「個性に応じて」と書き換えた方が良い、
そして、二行目のくだりは、「国はすべての人に無償で普通教育を行う」とし、親の義務については教育基本法などの法律に書けば良いのではと話されました。

●在留外国人の学ぶ権利、特に外国語支援は重要であり無償の日本語学校が必要。
●不登校の問題については、現在は、不登校であってもほとんどの人が15歳で卒業証書を授与される。そして、そのまま社会に放り出されるが「学び直し」の場を保障すべきである。「無償普通教育の学ぶ権利」は15歳を過ぎても無くならない。
●「教育の機会均等法」については、「おためごかし」との批判もあるが、導入3年目に当たり、皆で点検し見直しの意見を上げていくべき。
●「学び直し」の場として夜間中学は重要だが38校しかない。四国にはない。せめて都道府県立でつくるべき。
●「公立の不登校學校」の設置をすべき。

以上のようなことを、ひょこりひょうたん島の歌「勉強なさい」や、クレージーキャッツの「学生節」を引き合いにわかりやすく話して下さいました。
(もちろんYouTubeで聴けます、同世代の私は懐かしく聴きました)
また、課長補佐であった80年代、中曽根元首相の「臨教審」が打ち出した「個性重視の教育、自由自律、生涯教育」の概念は戦前からの「義務教育」からの転換点であったと評価されていることは、私としては意外でしたが、当時の官僚としてより良き方にと原案にも関わられたのだろうと思い、そのような見方もあるのかと再考しました。

▼第二部のパネルディスカッションでは、調布で子ども支援をされている三つの団体も交えてのやり取りでした。

青少年ステーション「CAPS」は、かつての我が家の近くにあり、部活を辞めた後の息子ができたばかりの「CAPS」にお世話になりました。

学習支援ボランティア「若者の再出発を支えるネット」の西牧先生は、我が家の子どもたち全員が中学時代にお世話になりました。私も。
西牧先生への質問で「学校現場では?」という問いに、「太っ腹な管理職が必要」と答えられていましたが、まさに「その通り!」と共感しました。
当時、「荒れている」と言われたその中学校で保護者も必死になって、花壇づくりや、毎日参観や、懇談会などに奔走したことを思い出します。
それらの活動を「太っ腹」に見守ってくれる管理職こそ学校にとっては重要と、本当に思います。都教委の方ばかり見てないでね!

最後に、このパネルディスカッションに参加されるはずだった、青少年の居場所「Kiitos」(止まり木という意味)の白幡さんが体調不良で参加できないと伺ってとても心配しています。様々な困難を抱えた若者を無条件で受け入れて、羽を休めていいよという場所をつくった白幡さんです。回復されることを、心から願っています。